バリュー投資をする際には理解しておきたい財務諸表の読み方 -貸借対照表(B/S)編-
2015/07/25
どうもこんばんは、Visisonです。
先週は色々な事の対応に追われていた為、中々ブログが更新が出来ずかなり間が空いてしまいましたが、《バリュー投資の考え方についてシリーズ》の第4弾を書いていこうかと思います。
今回は《財務諸表の読み方》という事で、バリュー投資というよりはファンダメンタル分析全般の事になりますが、バリュー投資と財務諸表の分析は切っても切れない存在ですので、今日はとりあえず財務諸表の読み方、その中でも特に、貸借対照表(B/S)にフォーカスを当てていきたいと思います。
【このシリーズの記事一覧】
1.株式投資(バリュー投資)を始めるにあたっての勉強方法について
2.バリュー投資の考え方について
3.バリュー投資をする際に役に立つ4つの指標について
4.バリュー投資をする際には理解しておきたい財務諸表の読み方-貸借対照表(B/S)編-←イマココ
さて、では行ってみましょう。
そもそも、財務諸表とは何か?
財務諸表(ざいむしょひょう、financial statements)は、企業が利害関係者に対して一定期間の経営成績や財務状態等を明らかにするために複式簿記に基づき作成される書類である。一般的には決算書と呼ばれることが多い。 財務諸表 – Wikipedia より
……うん、分かりずらいですね(
この言葉を簡単に咀嚼すると……
財務諸表とは、企業の状態を知る為の書類(業績や財務の状態を表す計算書)の総称である。
という事です。
で、その複数ある書類の内、貸借対照表(B/S)・損益計算書(P/L)・キャッシュフロー計算書(C/F)の3つが特に重要と言われ、これら3つを合わせて《財務3表》と呼ぶ呼び方もあるようです。
(ただし、単に財務諸表と言っても普通はこれら3つの書類の事を指すので、別に財務3表という呼び方は覚えなくても良いです←)
これらの書類を読めるようになることで、企業の状態(業績・資産状況)をきっちりと把握できるようになりますので、バリュー投資をする際の分析はもちろん、転職・就職等をする際に財務諸表を読むことで企業の見極めが出来るようになるなど、様々な場面で役立てることができます。
今回は上記の通り、貸借対照表について書いていこうと思います。
貸借対照表(B/S)の基礎
貸借対照表とは?
貸借対照表はバランスシートとも呼ばれ、企業が事業資金(負債・自己資本)をどのように活用し、資金をどのような形(資産)で保有をしているかについてを表した書類です。
《バリュー投資の考え方シリーズ》を最初から読んでいた人は、この説明にはちょっと心当たりがあるんじゃないでしょうか?
……そうです、第2弾の財務健全性の項で出てきた説明を言い換えただけです←
で、この貸借対照表ですが、書類の形式としては、左側に総資産(どのような形を保有しているか)を書き、右側に負債と自己資本(即ち、事業資金全額)を書くという形となっています。
で、総資産の額は、事業資金の総額(負債と自己資本を合わせた総額)に等しくなりますので、左側と右側が釣り合う。
つまり、バランスするのです。このことから、貸借対照表はバランスシートという別名が付けられているんですね。
図でいうと、こういう事ですね。
はい、これも第2弾で出てきたやつですね←
実は、これがバランスシートの形を表していたんですねぇ。
では、貸借対照表をもう少し詳しく見ていきましょう。
貸借対照表を詳しく見る
上の図では「資産」「負債」「自己資本」の3つに分けてざっくりと説明しましたが、実際の貸借対照表はもう少し細かく分けられています。
これは口で言うよりも図の方が分かりやすいと思うので、とりあえず下の図をご参照ください。
(チョイチョイ簡略化している部分はありますが、重要な部分は略して無いからこれで大丈夫……なはず←)
まず資産の部(背景:青系統)ですが、資産の状態により大きく、流動資産と固定資産の2つに分けられます。
加えて、固定資産はさらに細かく有形固定資産・無形固定資産・投資その他資産、と言うように細分化されます。
次に負債の部(背景:赤系統)ですが、こちらも負債の状態によって、流動負債と固定負債の2つに分けられます。
最後に純資産の部(背景:緑系統)ですが、これも幾つかのカテゴリーに分類されます。
これらの内、特に、資産の部と負債の部の状態を見ることが分析においては肝要となりますので、今回はその2つについて簡単に説明していきます。
貸借対照表:資産の部について
上でも書いたように、資産の部は大きく流動資産と固定資産に分けられます。
流動資産とは?
流動資産は、資産の内、1年以内に現金化・費用化できる可能性が高い資産のことを指します。
現預金・短期有価証券といった《現金同等物》や、売掛金などの《運転資本》、商品・製品・仕掛品・原材料といった《棚卸資産》はこの部に計上されます。
流動資産は現金化・費用化がしやすい資産である為、資産価値分析の際は簿価と同等か、あるいは簿価より若干低い程度で評価されます。
ただ、これら流動資産の内《棚卸資産》には注意が必要です。
そもそも、棚卸資産とは《在庫、およびそれに準ずるもの》の事です。
それらが本当に1年以内にすべて現金化できるでしょうか?
恐らく、無理でしょう。
それに、もしかすると計上されている棚卸資産の内の一部は不良在庫になっていて、簿価通りに処分できないかもしれません。
以上の点を総合的に考えて、他の流動資産より安定性が劣ると言えます。
故に、個人的には流動資産の内、棚卸資産の比率が高い銘柄には低い評価を与えています。
固定資産とは?
固定資産は、資産の内、販売目的でなくかつ継続的に会社で使用することを目的とする財産のことを指します。
言い換えれば、1年以内には現金化される予定がない(若しくは、出来ない)、流動性の低い資産とも言えます。
この資産は性格上いざというときに現金化がしにくい為、資産価値分析の際は(一部の資産を除き)簿価よりもかなり割り引かれた価格で評価されることが多いです。
また、固定資産はその状態によって、有形固定資産・無形固定資産・投資その他資産の3つに細分化されます。
◆有形固定資産とは?◆
固定資産の内、《有形であるもの》がこの項に計上されます。
すなわち、土地や建物・機械装置・車両・工具や器具、などの、実体のあるモノがここに計上されます。
資産価値分析の際は簿価よりもかなり割り引かれて評価されますが、土地や建物に関しては場所や状態によっては簿価以上の価値を有していることもしばしばあります。
◆無形固定資産とは?◆
固定資産の内《無形であるもの》即ち、実体のないモノがここに計上されます。
具体的には、ソフトウェア・のれん(営業権)・特許権・商標権、などですね。
どれも実体はありません。ここの項では、概念的なものを資産として計上しているのです。
故に、資産価値を分析する際は、この項に計上されている資産の価値は0として評価します。
価値の裏付けとなるものがモノでは無く概念では、売り様がほとんどありませんからねぇ……
強力なブランドを持つ一部の大企業の場合はこれらの項目が価値を持つこともありますが、少なくとも資産バリュー的には0評価にする方が賢明でしょう。
◆投資その他資産とは?◆
固定資産の内、有形・無形固定資産以外の長期所有目的の資産がここに計上されます。
具体的には、長期保有目的の有価証券・関連会社の株式、などですね。
資産価値を分析する際は……保有している株が上場しているか否かによって流動性が異なるので一概には言えませんが、流動性のある株式の場合だったらそれらの項に計上されている資産は簿価や終値ベースでの評価を与えます。
流動性が無い株式(非上場株式)の場合は、まぁ、0評価でもいいと思います。
資産の部 -まとめ-
資産は大きく分けて
・1年以内に現金化できる可能性が高い、流動性の高い《流動資産》
・現金化がしにくい、流動性が低い《固定資産》
の2つに分けられる。
資産の内、特に固定資産に関しては価値の算出が難しく、簿価から多少調整して資産価値を算出するなどの作業が必要となる。
また、流動資産であっても《棚卸資産》に関しては注意をする必要がある。
貸借対照表:負債の部について
負債の部には、その名の通り負債の状態が載っています。
こちらも資産と同様に、負債の状態によって《流動負債》と《固定負債》に分けられます。
流動負債とは?
負債の内、1年以内・若しくは短期間の間に返済が必要になる負債のことを指します。
つまり、流動資産の逆ですね。
買掛金・支払手形といった《運転資本》、短期借入金・1年内返済予定長期借入金などの《短期有利子負債》がここに計上されます。
なお資産価値分析の際は、負債に関しては全て簿価と同等の評価を与えられます。
固定負債とは?
負債の内、まだまだ返済期限は先だが、将来的に返済が必要となる負債の事を指します。
社債や長期借入金といった《長期有利子負債》や、退職給付引当金などの《将来払う必要がある費用を前倒しで負担させた金額》はここに計上されます。
負債の部 -まとめ-
負債は大きく分けて
・1年以内・若しくは短期間中に返済が必要となる《流動負債》
・将来的に返済が必要となる《固定負債》
の2つに分けられる。
資産価値分析の際は、これら負債は簿価通りの数値を使う。
貸借対照表の応用
貸借対照表を使った企業分析
貸借対照表の読み方を覚えて資産と負債の状況が分かる様になると、貸借対照表だけで企業の分析がある程度出来るようになります。
主に出来るのは《財務分析》と《資産価値の分析》ですが、今回は《財務分析》に焦点を当てていきたいと思います。
(資産価値の分析は、資産バリュー投資の事を取り上げるときに書こうかと思っています。)
貸借対照表を使った財務分析 -基礎編-
貸借対照表に記載されている数値を使って計算することによって、財務健全性を計る事が出来ます。
ここでは、基本的、且つ、非常に重要な3つの財務指標の算出方法を書いていきます。
(この項は第2弾のおさらいのようなものなので、第2弾を読まれた方などは【3.D/Eレシオ】から読み進めてください。)
1.自己資本比率
第2弾で紹介した、財務健全性を計る指標ですね。
【計算式】
自己資本比率(%) = 自己資本(株主資本合計+その他の包括利益累計額合計)/ 総資産(資産合計)
一般的には50~60%以上の銘柄は財務が健全であると言われます。
2.流動比率
これも第2弾で紹介した、短期の資金繰りから財務健全性を計る指標です。
【計算式】
流動比率(%) = 流動資産(流動資産合計)/ 流動負債(流動負債合計)
一般的には200%以上の銘柄は財務が健全であると言われます。
3.D/Eレシオ
第2弾で紹介s(ry
負債の中でも特に有利子負債に焦点を当てた指標で、有利子負債に対する自己資本の割合で、財務の健全性を計る指標です。
有利子負債というのは、負債の内、利子を付けて返さなくてはいけない借金の事です。
流動負債の内の《短期借入金》《一年以内返済長期借入金》
固定負債の内の《社債》《長期借入金》《コマーシャル・ペーパー》
及びこれらに準ずるものが、有利子負債に当たります。
有利子負債が多いという事は、すなわち、将来的に返済しなくてはならない借金が多いという事なんですが、それよりも重要なのは利子を支払う負担が大きいという事です。
この有利子負債というのは、持っていたら後々返さなくてはいけないというだけでなく、持っているだけで利子を取られるのです。
故に、持っていれば持っているほど、利子の支払いの負担が大きくなり、それが価値の毀損や財務状態の悪化を招くのですね。
以上の点から、出来れば、有利子負債の少ない(D/Eレシオが低い)銘柄を投資対象としたいところです。
【計算式】
D/Eレシオ = 有利子負債総額(短期・長期借入金・社債…etc) / 自己資本(株主資本合計+その他の包括利益累計額合計)
この数値は低ければ低いほどいいのですが、一応、個人的には0.4~0.5未満の銘柄を投資対象としています。
なお、0.4~0.5未満というのは最低限の数値であり、実際にはもう少し低いほうが個人的には好みです←
貸借対照表を使った財務分析 -応用?編-
さて、では続いては財務分析の応用編?です。
応用っていうか、紹介する指標がちょっとマニアックなだけですね←
今回は個人的に重要視している流動資産関連の指標を2つ紹介します。
1.当座比率
上で紹介した《流動比率》の親戚のような指標です。
流動比率と同じく《短期の資金繰りから財務健全性を計る指標》なんですが、こちらの指標は流動比率よりもさらに条件が厳しくなっています。
とはいっても、式自体は難しくもなんともなく、流動比率の式に少し付け加えるだけです。
式は以下の通りです。
【計算式】
当座比率(%) = (流動資産-棚卸資産《当座資産》)/ 流動負債《流動負債合計》
はい、流動比率の式の分子に《-棚卸資産》を付けるだけです。
これ即ちどういうことかというと、流動資産の内、短期間での現金化が疑わしい棚卸資産を0評価とすることによって、流動比率よりも確実に短期の資金繰りを計る事が出来るようになる、という事ですね。
流動比率の問題点は、棚卸資産が全て簿価通りに評価されてしまう事です。
それにより、棚卸資産が異様に積み上がっている(簿価通りに処分できるかわからない不透明な資産を多く有する)企業であっても、流動比率でみれば財務は健全であるという評価を与えてしまう事があるんですね。
当座比率はそういった銘柄にはNOを突きつける、流動比率の弱点を補った指標だと言えます。
なお、当座比率は100%以上が一つの目安となります。
2.棚卸資産構成比率
総資産のうち、棚卸資産が占める割合がどの程度あるかを表します。
【計算式】
棚卸資産構成比率(%) = 棚卸資産 / 総資産
計算は簡単ですね、棚卸資産を総資産で割るだけです。
ちなみに、この指標に関しては目安というものがありません。
高いと悪いという訳でもなく、かといって低ければ低いほどいいという訳では無いのです。
一般的に、在庫が増えるということはあまりいいことではありません。
《在庫が増える=現金が減り、リスクのある資産である棚卸資産が増える》ですからね。
ただ、その逆に在庫があまりにも少ないのも問題なんですね。
過剰な在庫の増加を恐れて棚卸資産の量を低水準で維持してしまうと、必要なときに品切れをしてしまい、せっかくの儲けのチャンスを逃してしまうことに繋がるからです。
以上の点から、この指標は《前期との比較、他企業との比較》を行う際に使える指標であると言えます。
前期と比べて、棚卸資産が急激に増減していないか、他企業(特に同業他社)と比較して、棚卸資産は多すぎる事は無いか?など、そういった面から見ておかしい所はないかを分析する為に使用しましょう。
貸借対照表についてのまとめ
・貸借対照表は、企業が事業資金(負債・自己資本)をどのように活用し、資金をどのような形(資産)で保有をしているかについてを表した種類である。
・資産は、1年以内に現金化しやすい《流動資産》と現金化しづらい《固定資産》の2つに分けられる。
・負債も同様に、1年以内に返済する予定の《流動負債》と将来的に返済が必要になる《固定負債》の2つに分けられる。
・資産、負債に書かれている項目の内のいくつかを数値を使う事によって、財務の健全性を計る事が出来る。
以上、貸借対照表の簡単な読み方についてでした。
ここまでお読みいただきありがとうございましたm(_ _)m
Comment
いつも読ませていただいてます 次もごゆっくりお願いします
>>ふぁんさん
いつもありがとうございますm(_ _)m
更新速度はゆっくりですが、これからもお付き合い頂けると幸いです。
こんばんはです!
今回も、わかりやすい説明ありがとうございます(^^)
楽しみに待っていますので、ゆっくり次回もおねがいします。