簡単な理論株価の求め方 その3~理論株価web 《はっしゃん》氏方式~
自分が銘柄選択を行う際に重視するのは割安性だったり成長性だったりするのですが、その中でも割安性を計る際には《理論株価》を用いて、割安・割高を判断することがあります。
この理論株価が絶対的な指標というわけではないのですが、理論株価と実際の株価の乖離を求めることで、ざっくりとですが投資先の安全性(底堅さ)や将来性(上値余地)を知ることができるので、自分はそれなりに重用しています。今回は、この理論株価を求める際に役立ちそうな《理論株価の簡単な求め方》を解説していこうかと思います。
なお、この《理論株価の求め方》シリーズは複数回の掲載を予定しています←
最終的には4~5種類ぐらいの求め方を紹介していくことになると思いますので、興味のある方はお付き合いくださいm(_ _)m
という事で《理論株価の求め方》シリーズの第3回です。
今回は、前回よりも資産価値の影響がやや大きい算出方法について書いていきます。
第1回(成長株向け) / 簡単に理論株価を求める方法 その1~日経マネー(2006年10月号)方式~
第2回(割安株向け) / 簡単な理論株価の求め方 その2~アクションラーニング《日根野 健》氏方式~
簡単な理論株価の求め方~理論株価web 《はっしゃん》氏方式~
《【はっしゃん】のスロートレード》という投資ブログを運営している《はっしゃん》氏が考案した理論株価の算出方法です。
詳しい説明は省略するとして、ここではとりあえず算出の方法を書いていきます。
算出方法
算出式
理論株価=事業価値+資産価値
事業価値=(EPS*ROA*150)*評価率
資産価値=(BPS*係数)*評価率
つまり
理論株価={(EPS*ROA*150)*評価率}+{(BPS*係数)*評価率}
ですね。
事業価値をEPSとROAから求め、資産価値はBPSから求める、これもポピュラーなタイプの算出方法ですね。
EPSに関しては、予想EPSでも実績EPSでもお好きな方を。
BPSに関しても、予想BPSでも実績BPSでもいいですが、自分は楽な方(実績BPS)を採用しています←
さて、EPS・BPS・ROAに関しては特に説明は不要ですね。
……では次の項からは、出ていない数値である、《BPSにかかる係数》と《評価率》の説明をしますね。
BPSにかかる係数
自己資本比率を基にして算出します。
……まぁ算出っていうほど面倒なことではなく、単純に
・自己資本比率80%以上:80%
・自己資本比率67%以上:75%
・自己資本比率50%以上:70%
・自己資本比率33%以上:65%
・自己資本比率10%以上:60%
・自己資本比率10%未満:50%
こんな感じなんですけどね。
自己資本比率が87%だったら、BPSに*0.8(80%)する。
自己資本比率が52%だったら、BPSに*0.7(70%)する、これだけです。
《BPSから自己資本比率別に資産毀損リスクを織り込んで評価する為》にこのような形を採用しているようです。
評価率
PBRを基にして算出します。
……まぁ、こちらも算出っていうほど面倒なわけではなく、単純に
・PBR1.00倍以上:100%
・PBR0.67~0.99倍:95% (株価が解散価値を割り込み、市場から警告を受けている状況)
・PBR0.50~0.66倍:90% (株価が解散価値を大きく割り込み、投資先として疑問視されている状況)
・PBR0.34~0.49倍:80% (株価が解散価値の半分以下となり、業績や財務状況に注意を要する状況)
・PBR0.21~0.33倍:50% (株価が解散価値の1/3以下となり、破綻予備軍と認識されている状況)
・PBR0.04~0.20倍:5~25% (株価が解散価値の1/5以下となり、破綻リスクが織り込まれている状況)
・PBR0.00~0.03倍:0.5~2.5% (株価が暴落し、破綻もしくは破綻確率の高い危機的な状況)
このような感じなんですけどね((
《PBRを基に市場からの評価を分析し、各銘柄に見合った係数を掛ける》という形のようです。
PBR0.2倍以下の数値があやふやですが普通に投資を行っていれば、まずPBR0.2倍以下の銘柄をつかむ事は無いと思うので、まぁここら辺は問題ないと思います(
実際に算出してみた
では、実際に自分の保有銘柄(帝国繊維)に当てはめて算出してみます。
・EPS(予想EPS) / 183.34円
・BPS(実績BPS) / 1551.97円
・ROA / 8.4%
・係数 / 75%(自己資本比率=67.2%【前期実績】)
・評価率 / 100%(PBR=1.0倍以上)
1.事業価値の算出
事業価値=EPS*ROA*150
事業価値 =183.34*0.084*150
=2310.08
≒2310円
2.資産価値の算出
資産価値=BPS*係数
=1551.97*0.75
=1163.98
≒1163円
3.事業価値と資産価値を合計し、評価率を掛ける
理論株価=(事業価値*評価率)+(資産価値*評価率)
=(2310*1.00)+(1163*1.00)
=3473円
A. 3473円
4.現在の株価との乖離を求める。
乖離=理論株価-現在の株価
=3473-2515
=958円
A. 乖離 = 958円
5.感想
今までの算出方法の中で、一番、資産価値の評価が大きい算出方法ですね。
資産株の分析には向いているかもしれません。
一方、事業価値の算出に関してはROAの影響が大きく出てきますので、第1回の算出法と同じく、営業利益率が異様に高いスマホゲーム関連銘柄とかが高評価になったりします。
ここら辺は第1回と同じく、鵜呑みにせず本当に信頼できる数値なのかどうかを見極める必要がありますね。
基本的には、低PER銘柄の分析や資産株の分析に向いていますね。
成長株に使う場合は、事業価値の数値が信頼できるのかどうかを見極めることも必要になってきます。
まとめ
- 理論株価は《(EPS*ROA*150)+(BPS*係数)》という式で求めることができる。
- この算出方法は、主に割安株や資産株に対して使うのが良いと思われる。
- 成長株の理論株価を算出する際は、事業価値の数値に注視する必要がある。
以上、理論株価の求め方その3でした。
次で、理論株価の記事はラストにしたいと思います。
ラストは、一番楽な算出方法(?)について書いていきます。
ここまでお読みいただきありがとうございましたm(_ _)m
Comment
勉強になります。
一つ質問があります。
×150の意味と根拠は何でしょうか?
よろしくお願いします。
>>山副さん
コメントありがとうございます~
う~ん、*150の意味と根拠ですか……
考案者のはっしゃん氏にしか真意は分かりませんので、とりあえず自分の予想ですいませんが……
とりあえず、最後に掛けている*150の部分は、日根野氏でいうところの係数(PER)と同じだと思うんですよね。
で、150は多分、PER=15倍という意味なんじゃないかと思うんです。
とりあえず、例を出しますね。
現在価値が1000円、EPSが100円、ROAが5%の銘柄があるとします。
EPS=100
ROA=5%
事業価値=EPS*ROA*150
まず、上の式でEPSとROAを掛ける部分がありますよね?
そこの計算を処理すると、例だと5になります。
=(100*0.05)*150
で、5にPER(15)を単純に掛けるだけだと、事業価値が75円とかいうとんでもなく低い数値になってしまいます。
流石に現在価値との乖離が大きすぎますよね?
(EPSが100円で株価が1000円のPER10倍の株がこんなに低い事業価値なわけがない。)
なので、PERを10倍した150という数値を掛けるのではないかなぁ……と。
事業価値=(100*0.05)*15=75円 ×(現在株価に対して明らかに低すぎる事業価値の数値)
事業価値=(100*0.05)*150=750円 ○(妥当そうな数値)
ちなみにPER15倍を基準としている理由に関しては、単純に東証1部の平均PER(割安と割高の境界)がその付近だからじゃないかな……と。
ただの憶測になってしまい申し訳ありませんが、個人的には*150という数値はそういう意味なんじゃないかと思っています。